「汚くてすみません」って言わなくていいんです 〜片付けの現場で感じる“謝罪”の背景〜

片付け

1. よく聞く“ある一言”

家事代行のお仕事をしていると、お客様のお宅に伺った際によく耳にする言葉があります。

それが、

「すみません、汚くて…」

この一言、実はとても多くの方が口にされるのです。

でもそのたびに、私は心の中でこう思います。

「そんなふうに謝らなくて、大丈夫ですよ」と。

今回は、片付けの現場で感じる「謝罪の気持ち」について、私自身の経験を交えながら綴ってみたいと思います。

2. なぜ人は散らかった部屋を前に謝るのでしょう?

「こんな状態で人を呼ぶなんて……」

「もっと片付けておくべきだったのに……」

そうした思いから、多くの方がつい「すみません」と謝ってしまうようです。

日本では昔から、「人に迷惑をかけてはいけない」「家の中はきちんとしているべき」といった考え方が根付いています。

そのため、部屋の状態を“自分自身の評価”と重ねてみてしまう方も少なくありません。

でも、部屋が散らかるのにはそれぞれ理由があります。

仕事が忙しい日々、育児や介護、体調の変化、気持ちの余裕が持てない時期……

どれも、誰にでも起こりうることです。

だからこそ私は、「片付けができない=だらしない」なんてことは決してないと思っています。

お客様の事情に寄り添いながら、そのときそのときの最善を一緒に探すのが、私たちの役目です。

3. 謝る人・謝らない人の違い〜世代や立場によるちがい〜

「すみません」とよく謝られる方の傾向には、世代やご状況が関係していることもあります。

たとえば、高齢の方ほど謝られる率が高いように感じます。

「人に頼るのは申し訳ないこと」

「家のことは自分でするのが当然」

そういった価値観の中で長年過ごされてきた方が多いからかもしれません。

実際に、ご本人が自ら家事代行を依頼されるケースはあまり多くなく、

ご家族、特に離れて暮らすお子様からのご依頼が多いのも特徴です。

「最近、片付けが大変そうで……」「掃除が行き届いていないようで心配で」など、温かいお気持ちからのご依頼がほとんどです。

一方で、働く女性のお客様は、比較的家事代行を現実的な選択肢として利用されている印象があります。

「時間をお金で買う」という考え方で、サービスとして割り切って頼んでくださることが多く、罪悪感ではなく、「助かっています」「ありがたいです」という前向きな言葉をいただくことが多いです。

どちらも、その方なりの背景や人生があってのこと。

それぞれの想いに寄り添いながら接することが、私たちの大切な仕事だと感じています。

4. 謝罪の裏にある本当の気持ち

「すみません」の言葉には、少しの照れや遠慮、そして「人に頼ることへのためらい」が隠れていることがあります。

お客様の中には、笑いながら「ごめんなさいね、ぐちゃぐちゃで!」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

でも、そう言いながらもふと、

「最近ちょっと元気が出なくて……」「やる気が出ないの……」と静かにお話しされることもあります。

私たちは、そうした小さな“本音”を大切にしたいと思っています。

「大丈夫ですよ」と受け止めること。

「そのままでいいんですよ」と伝えること。

そして、もうひとつそっとお伝えしたいことがあります。

私たちは、これをお仕事として、きちんと代金をいただいてお伺いしています。

ですから、どうか「申し訳ない」と思わず、もっと気軽に頼っていただけたらと思います。

「人に頼るのはちょっと勇気がいるけど、頼んでよかった」

そんなふうに思ってもらえることが、私たちにとって一番うれしいことなのです。

5. おわりに:謝らなくて大丈夫です

「汚くてすみません」と言われるたびに、私は「こちらこそ呼んでくださってありがとうございます」と思います。

お部屋が片付いていなくても、ホコリがたまっていても、全然大丈夫です。

私たちは、困っているとき、疲れているとき、「ちょっと助けてほしいな」と思ったときにこそ、呼んでいただける存在でありたいと思っています。

どうか、「すみません」ではなく、「助かりました」「またお願いします」と言っていただけるような関係でいられたら——

それが、私たちにとってのいちばんのやりがいです。

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